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日本クラフト&デザイン文化を支える作家たち

丈夫、軽い、重ねやすい、しかも美しい。 熱い料理は熱く保ち、器は熱くならない。 漆の器は、合理的な生活用品。

漆/岩手県盛岡市

町田 俊一

Shunichi Machida

 町田さんによると、漆器は、生活の道具として非常に合理的なものであるとか。驚いた。一般には、漆器といえば器として高級品であり、その扱いも難しそうで、汁椀はともかく、それ以外の器はハレの日に使うものと思われているような気がする。

 漆器の特性は、まず恒久性。とても丈夫であり、冷蔵庫で冷やすこともできる。万が一、塗りがはげたり欠けたりしても、上等な塗物なら塗り直しが可能。町田さんも30年前に作った椀を2回塗り直して今も使用する。漆の塗膜は20回塗っても1mmもないほど薄いが、接着剤として非常に強いのだ。

また、熱伝導性が悪い。だから、熱い汁を入れても椀自体は熱くならないし、冷たいものを入れても冷たくなりすぎず、持ちやすい。熱いものが冷めにくく、冷たいものがぬるくならない、ということでもある。

 軽いことも漆器の特徴である。お年寄りや子どもにも扱いやすい。軽いせいもあって重ねて収納しても大丈夫。

 さらに、天然の塗料であることも大きい。環境ホルモンに関しては優等生であると、町田さんはいう。だから、赤ちゃんにも安心して使わせることができる。

 納得した。これなら、日常の暮らしの中でも手軽に使おうという気になれそうである。とくに若い人には、まず使ってみてほしい、と町田さんは望んでいる。

 今回の出品は、朱漆の椀と大鉢。その朱色が実に美しいのは、この色を出すために顔料の調合に工夫があるからだ。艶を抑えた肌が朱色をより美しく見せている。この椀をテーブルで使うなら、ぜひ白熱灯にしてほしいとか。蛍光灯では朱色がくすんでしまうからである。

 大鉢は形がユニーク、九角形である。その角から底に向かうラインが斜めにひねってある、という凝ったデザイン。茶道では器の景色を正面とする。この鉢なら、そんなときも正面を決めやすい。その上、かなり大きいのに、軽い。木地ではなく、乾漆だからだ。麻を何回も貼り付けて作った型に漆を塗るのである。大鉢を手にとってみると、軽いという漆の特性がよくわかる。他の素材では、この大きさにこの軽さはありえないだろう。

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