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日本クラフト&デザイン文化を支える作家たち

どんなに小さい間伐材のかけらも 貼り合わせれば箸置きになる。 木は捨てるところがない素材 。

大分県/湯布院町

時松 辰夫

Tatsuo Tokimatsu

 都市は文明を発展させる使命がある。田舎は地球を保全する使命がある。そう思う時松さんだが、伊豆で木工を教えるにあたり、大きな危惧を抱いている。田舎の将来は、土に立ってどのような生活を築けるかにかかっているのに、地球の保全つまり土を守ることが危なくなっているからだ。伊豆でも田舎の例にもれず、若い人はいなくなり、過疎化が進み、町村合併が盛んになっている。日本のクラフトがどうなるか、それはこのような日本全国の田舎が抱える問題と切り離すことができない。

 椿の花を思わせる形の弁当箱は、そんな思いから生まれた。かつて伊豆に向かう列車の中で売られた踊り子弁当。伊豆は川端康成の『伊豆の踊り子』で知られた地であるが、肝心の土地の人々がそれを忘れかけているのは、あまりにもったいないからでもある。この弁当箱に伊豆七菜とご飯を入れて、かつての踊り子弁当を再現したいと願う時松さんである。

 同時に花形の木皿も作った。トレーにもなるこれは、元来皿やトレーにはシンプルな丸い形が多いが、もっと楽しく盛りやすいものにしたいと思ったのである。

 木という素材自体が、地球の保全に大いに関わるものである。木は、どんなに小さくても捨てるところがない。間伐材のさらに小さいかけらも、3cmの角材にし、色合わせをしてていねいに貼り合わせて集成材にし、箸置きなどにする。建築の材には嫌われる松、杉、ひばなどの針葉樹のアテの部分も、その5倍も堅くてしなる性質を生かして椀や鉢にする。

 こうして木を大切にして作られる器だが、時松さんによれば、クラフトとは使い手がしっかりしなくては成り立たないものでもある。関わった人すべてを幸せにする、生活を楽しく豊かに、しかも質を上げていくことがクラフトにはできる。しかし、使い手には訓練が必要となる。では、どのような訓練をすればよいのか。それは、「使い比べる」ことだという。椀なら椀、いくつかを求めて使い比べてみる。そうすれば、どれが使いやすく美しいものであるか、必然的にわかってくる。クラフトの将来は、そのような目が肥えた使い手が増えることにもかかっているのである。

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